タンポポ調査(12) タンポポが咲いている期間

 現在行われているタンポポ調査は、全体では3月から5月の間で行なわれています。今年は新型コロナウィルスの関係で、大規模に調査ができなかったので、来年の春も継続して「タンポポ調査2020」として実施することになっています。

 ところで、そろそろ咲いているタンポポの数が少なくなってきたと思われませんか。ピークを越えて、今咲いているのが最後かもしれません。三重県ではほぼ4月から5月末で調査をしてきましたが、和歌山県や高知県では2月下旬ぐらいから始めています。暖かいので、早くから咲き始めるのです。

 でも野外に出ることが多い方は、思い出してください。タンポポって数は少なくても1年中、咲いていませんか。そうなんです。実はタンポポは一年中咲いているのですが、在来種は、この春の時期だけに咲きます。それに対して外来種は、春に多いですが、一年中咲いているのです。在来種と外来種の比較をする調査は、両方のタンポポが咲いている時期だけが可能なのです。そのためにタンポポ調査はこの時期に行っています。

 ついでに外来植物の性質について書いておきます。在来と外来のタンポポは、相互に競争関係にあるわけではありません。外来動物の場合には、その大部分が在来の動物を押しのけたり、食べてしまったりして、いわゆる生態系をかく乱し、他の動物を絶滅に追い込んだりするわけですが、植物の場合には少し違います。

 植物の外来種は、大部分は日本の植物が生えている場所に、在来の植物を押しのけて入ることはしません。植物にとっては光が必須ですから、上に植物が生えている場所には押し入れないのです。外来植物は、人間が裸地を作った場所に、まず最初に入ってくるのです。パイオニア植物といいます。タンポポ調査をした感想で、「憎いセイヨウタンポポを全部ひっこぬいてやりました」という方がいますが、それは間違いで、外来種は裸地に生える植物ですから、セイヨウタンポポを駆逐しようとするなら、人間がいなくなるしかないのです。

 今身近に見ている植物の大部分は外来植物ですが、特に田畑の周辺の雑草はすべてといっていいぐらい、イネやいろいろな野菜などが日本に入ってきたときに、一緒に種子が入ってきて、日本に定着したもので、そういう植物を「史前帰化(しぜんきか)植物」と呼び、帰化植物というのは記録がはっきりしている江戸時代末ぐらい以後に日本に入ってきたものをいいます。日本の自然にとって、外来生物はとても困った存在なのですが、すべて人間が世界の各地から運んできたものなのです。(布谷)

(帰化植物という用語は使われなくなっていますが、史前帰化は前川文夫という植物学者の命名した用語なので、史前外来という使い方はしません。)


 タンポポ調査の記事は、今回で終了します。読んでいただき、ありがとうございました。質問やご意見などあれば、拝聴したいと思いますが、博物館にはミュージアムパートナーのスタッフが常駐しているわけではありませんので、ファックスで博物館まで頂けるとありがたいです。

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