タンポポ調査(6) 在来種と外来種

 そもそもタンポポ調査は、何を調べているのでしょう。タンポポにはもともと日本にあった在来種と、外国から入ってきた外来種があります。外来種は昔は帰化種と呼んでいました。その名のほうがなじみのある方もいるかもしれません。

 タンポポは人が活動している場所に生えていることは前回に書きましたが、在来種は畔や堤防など、人が管理して草刈りなどの手入れをしている場所で生えています。一方、外来種は道路や宅地など街中で人が大きく手を入れて工事をし、攪乱した場所に生えています。つまりある範囲にどちらのタンポポが多いのか、を調べると、自然状態がどれくらいの比率で残っているのかがわかります。そしてこの調査は簡単で誰でも参加でき、おまけに沢山の人が参加するほど、成果が大きくなるという性質があります。

 タンポポ調査で調査場所、できれば緯度・経度を、そうでなければ採取した場所を教えていただくのは、およそ600m四方にメッシュを想定して、そのメッシュの中の比率を出すためです。一番長くこの調査を行っている大阪府周辺での経年調査結果を見てください。

 赤が外来種のみ、緑は在来種のみ、中間の色はどちらが多いかを示します。70年代は、大阪市・京都市・神戸市・和歌山市に赤い色が集中していますが、2005年では全く変わっています。1970年の白い部分は未調査が多いですが、2005年ではほぼ森林地帯です。

 なぜ在来種と外来種の生えている場所が違うのか、は早い時期に研究がされています。在来種は種子が少なくて重いので、遠くに広がりにくく、地面に落ちてもすぐには発芽せず、花が咲くまで数年かかります。おまけに別の株から花粉をもらわないと種子ができません。そのため近くにほかの株が必要で、集団で集まる必要があります。あまり移動しない性質です。外来種は反対で、遠くに飛んで行き、花粉がなくても種子を作ることができるので、遠くに広がる性質があります。おまけに外来種はややアルカリ性の土壌を好み、町に適応できるのです。短い期間に植物の種類が大きく変わっているのがわかります。(布谷)

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