タンポポ調査(7) 雑種の存在

 1970年代に大阪で大規模なタンポポ調査が始まったときには、タンポポの種類はカンサイタンポポと外来種2種を考えるだけで済みました。大阪府下では、ほかの種類は見られなかったのです。そして環境との対応が一番明確なのは2倍体のタンポポでもあるために、調査結果が非常にはっきりと示せたのです。

 誰でも簡単に参加でき、結果が明確なため、この調査法は全国の市民団体に広がり、小学校の理科の教科書にも紹介されるようになりました。ところが1990年ころに新潟のタンポポを研究している研究者が在来種と外来種との間に雑種ができることを発見されたのです。

衝撃的な事件でした。おまけにそういう目でタンポポを見ると、図の2~4のような花があることに気が付きました。先入観を持ってみていた結果です。雑種ができることがわかると、在来種と外来種の比率で環境調査をするという方法が使えないということになり、例えば理科の教科書からも外されてしまいました。

 1990年の調査の際に、どうするか議論が行われ、いろいろな実験もした結果、雑種の生態的な性質は外来種と同じなので、在来種をきちんと区別し、(在来種)対(外来種+雑種)とすれば、調査は可能ということでした。そこで採取するときに図の1~5を現場で記録することで(封筒の中で押しつぶされると分からない)、雑種を区別することにしました。

 実はこれがなかなか難しく、在来種にも1~2のものがあります。そして雑種は1~5のすべての形のものがあります。在来種の形をした雑種をどう見分けるかというと、1~2の花の場合には花粉を顕微鏡で見て、均一な、しっかりした花粉を持っておれば、在来種と判断します。雑種は花粉がないか大きさがバラバラです。3~4は雑種です。5の形をした花では外来種はもともと花粉がバラバラなので、花粉では雑種との区別はできません。そこで種子で遺伝子分析をします。種子の採取も同時にお願いしているのは、そのためなのです。その分析は専門家にしかできませんから、府県ごとにサンプル50個を送り、大阪市立大学の研究室で分析をお願いしています。ですから雑種の数はカウントできておらず、5の形の花の数に対して、雑種の比率から計算した数字です。(布谷)

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