タンポポ調査(8) ちょっと寄り道

 種子の飛ばし方

 5月に入るとタンポポの盛りはそろそろ過ぎて、花よりも冠毛(綿毛)が目立ってきます。非常にきれいな形をしていて、風に乗って飛んでいくのを見ると、ちょっとホッとします。ところで、花の高さと冠毛のついている高さとはかなり差があることに気が付いておられるでしょうか。場合によると倍ほどの違いがあります。

 もちろん冠毛の花柄のほうが高いです。株を確認すると、花が咲いてまっすぐに立っている花柄、花が終わって、地表に横になっている花柄、そして冠毛の付いたまっすぐの花柄があります。タンポポは花が終わるといったん地表に倒れ、しばらくして立ち上がり、成長して長くなり、冠毛を開きます。

 冠毛は風に乗って遠くに飛んでいきます。そのためには少しでも高い位置から飛ばすほうが風に乗りやすく、またタンポポの花と同じ高さでは邪魔になって、飛んでいくことができません。風で種子を広げる植物は何かしら、風に乗る工夫をしているものですが、タンポポの場合は、一休みして高い位置から種子をばらまく工夫をしているのです。

 シロバナタンポポ

 少し古い図鑑を見るとシロバナタンポポは九州に多いと書いてあります。実際に今でも九州の方は、黄色いタンポポなど見たことがない、という方が多く、反対に関西では白いタンポポを初めて見た、という方が今でもおられます。シロバナタンポポはごく最近になって東へ広がっている植物です。私が初めて大阪で見たのは1970年代の終わりごろでした。その頃はそう簡単にみられるタンポポではありませんでした。

 シロバナタンポポは春一番に咲きだし、株や花は大きく、年間の長い期間咲いていることに気が付いておられる方も多いと思います。シロバナタンポポは在来種ですが、在来種どうしの雑種であり、その両親は、カンサイタンポポとケイリンシロタンポポであることがわかっています。

 そして雑種起源で5倍体、性質は外来タンポポと同じです。つまり花粉がなくても繁殖することができます。シロバナタンポポはすべてクローンだと言われていました。ある時に九州?のどこかでカンサイタンポポとケイリンシロタンポポの雑種が一つの果実だけで起こり、その果実は花の色が白く、その性質をもったクローンが少しずつ広がっていった、という説明がされています。つまり日本中でみられるシロバナタンポポは、一つのタネからクローンとして広がったものだというのです。不思議な、面白い話でしょう。その後、シロバナタンポポの別のクローンが生まれて広がっている、というようなことも分かっているようです。(布谷)


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