タンポポ調査(10) 外来タンポポ

 日本では外来タンポポは、セイヨウタンポポとアカミタンポポの2種類があり、アカミはより都会的な場所に生えているとされています。けれども世界的にみると日本のタンポポの世界は非常に特殊なようです。それは二倍体が残っており、在来のほぼはっきりした種がいくつも見られることです。

 ヨーロッパには数百種類のタンポポが見られて、相互に雑種を作り、種の区別がほとんどつかなくなっていると聞いたことがあります。そして日本の2種類の外来種も、特に関東地方のタンポポ研究者からは、「純粋の外来種は、もはや関東にはないかもしれない」という話です。純粋の外来種というのはおかしな言い方です。最初に外来種として認識されていたセイヨウやアカミは見られなくなっているということです。

 そもそもセイヨウタンポポが日本には入ってきたのは、明治初期の北海道の開拓の際に、アメリカから来たお雇い外国人がサラダ用に持ち込んだといわれています。アメリカではありませんが、ピーターラビットの絵本に出てくるサラダの絵には必ずタンポポの葉が入っています。恐らくその後もいろいろなルートで日本に入ってきていると思われますが、その初期の、セイヨウタンポポと呼ばれていたタンポポはほかの外国から入ってきたタンポポと混ざり、元のものはないだろうということです。つまり日本のタンポポの世界でも次々に混ざり合って、均一化している可能性があります。今では畑で作られている、タネ屋さん売っている食用のタンポポが、一番最初のセイヨウタンポポに近いそうです。

 タンポポ調査は、市民による環境調査として始まりました。そして都市化の指標となりました。長期の調査の結果を並べてみると、非常に早くにタンポポの種類が置き換わっていって、その速さに驚きます。動かない植物のイメージとはかなり違うでしょう。

 そのこととともに、1990年ごろに在来種と外来種との雑種があることがわかりました。いったいいつから起こっていたのかはわかりません。でも雑種の比率はどんどん増えていて、在来種は減っています。もしタンポポ調査が行われていなかったら、誰も気が付かない間に、日本のタンポポは雑種だらけになり、もともとの姿がわからなくなるところでした。植物の進化が目の前で起こっているという貴重な事例であり、また日本の種が消えていくという大変な事態が起こっているのです。

 恥ずかしいことを一つ書くと、琵琶湖博物館の昔の展示の中に、滋賀県でのタンポポ調査の展示がありました。その時に調査結果のパネルの前に、カンサイタンポポとセイヨウタンポポのレプリカを並べました。1996年開館です。タンポポに雑種があることがわかって、改めてそのレプリカを見ると、明らかに雑種でした。形体4でした。思い込みで作ってしまったのです。

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